わが子を信じて腹をくくろう、あなたの子どもは大丈夫です(不登校新聞2020.12.15より)

昨年の12月に松山市にも講演に来ていただいた、川崎市子ども夢パークの所長で、長年不登校の子どもたちを支援してきた西野博之さんの講演の内容を転記します。

※この内容は不登校新聞2020.12.15分を転記しています。

 2020年10月11日、愛知県豊田市にて「フリースペースたまりば」理事長・西野博之さんの講演が行われた(主催・不登校を考える豊田の会まちあいしつ)。講演では昨今の社会状況をふり返りながら、親はどうやって子どもを支えていけばよいかがテーマとなった。抄録を掲載する。

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 こんにちは、西野です。今日は、みなさんに「大丈夫」を手にいれてほしいと思っています。「いやいや大丈夫じゃないです。子どもが不登校になって、この先が心配でたまりません」という声も、もちろんあるでしょう。でも、今日の話を聞いて、「大丈夫だ」という気持ちになっていただけたら、うれしいです。

 まずみなさんと共有したいのは、この社会はここ数十年のあいだにどんな変化があったのか、ということです。あれは1980年代だったでしょうか。中学生が学校でタバコを吸いながら校舎を歩いていました。窓ガラスを割りまくっていました。校庭をバイクで走りまわっていました。そんな時代がありました。今では中学生も高校生もすっかりおとなしくなりました。先生を殴らない。窓ガラスなんか割らない。だけど、自分より弱い生徒に暴力を向ける。そんな社会になっています。

 いじめの数は、文部科学省にまで届いただけでも年間約61万件です。先生が気づかないいじめなんていくらでもありますから、これは氷山の一角です。そして61万件のいじめのうち、約48万件は、小学校で起きているんです。しかも重大事態の発生件数は約720件。命にかかわるようないじめが、年間720件も起きている、ということです。

 小中学生のなかでいじめが一番多いのは何年生かわかりますか? 正解は、小学校2年生。いじめが驚くほど低年齢化しています。小さなころから、子どもたちはストレスをためている。社会のありようや、目に見える子どもたちのありようは変わっても、子どもが抱えている生きづらさは変わっていない。むしろ強まっているように見えます。

 では、なんで子どもたちは苦しんでいるのか。苦しんでいる子どもたちの特徴のひとつに「自己肯定感の低さ」があります。令和元年版の「子供・若者白書」では「自分自身に満足をしているか」という質問に対して、堂々と「満足している」と答えられた日本人は10%しかいません。

 「子どもの自信を奪っているのは、いったいなんなんだ」。これが私のライフテーマでした。ずっと考え続けて、10年前にひとつの仮説を立てました。それは、子どもの自信を奪っているのは、「大人たちの不安」なんじゃないか、ということです。「私の子育てはこのままでいいの? 正しい親って評価を受けられるの?」。大人はそれが心配なんです。そして他人から「正しい親」と言ってもらうために、子どもの評価を親の評価と結びつけて考えてしまう。「お宅の子は〇〇高校へ行ったの? そして〇〇大学まで進学したの? やっぱり親の育て方がよかったのね」と言われたいんです。

子どもたちの生きにくさが

 今、早期教育が全盛です。習い事をとにかくたくさんやらせる。手遅れにならないように、やらないよりやらせたほうがいい、と。先日、保育園の運動会に呼ばれたんですが、驚きました。年長さんの障害物競走では、子どもたちが鉄棒で逆上がりしてから前に走っていくんです。保育園で逆上がりですよ。小学校の課題が、どんどん保育園に降りてきている。もう子どもたちの生きにくさはピークに達しているんじゃないかと思います。

 大人たちは不安なんです。そして子育ての完璧さ、正しさを求めすぎているんです。それも、子どもに対して求めている。だから子どもたちは弱音が吐けない。つらい感情を外に出せない。そして子どもたちはそのストレスを別の子にぶつける。そうやっていじめが再生産されていくんです。

 さて、現在の社会状況を踏まえて、私たちが行なっている取り組みを紹介しようと思います。私たち「認定NPO法人フリースペースたまりば」は2003年から神奈川県川崎市の子ども夢パーク内にある「フリースペースえん」の運営をしています。

 「子ども夢パーク」のなかには、このほかにプレーパーク、交流スペース、屋根つきスポーツエリア、楽器の練習につかえる防音スタジオなどがあります。朝9時から夜9時まで毎日開いていて、無料で利用できます。2006年からはこの夢パーク全体の指定管理者として、管理運営を任されていて、私が所長をしています。今では毎年およそ9万人が利用しています。

 夢パークの特徴は、子どもの「やってみたい」を最大限尊重する、ということです。大人が勝手に決めた「やらなきゃいけないこと」ではなく、子ども自身のなかから生まれてくる「やってみたいこと」を尊重するんです。水遊びしたい、泥遊びしたい、たき火したい、全部できます。子どもにとって「遊ぶ」というのは、生きることそのもの。息をするように、食事を取るように、遊ぶことを通して心と身体の栄養を取っています。

 それから、ただ何もせずごろごろしていたい、これももちろんできます。夢パークをつくるときのワークショップで一番多かった子どもの声は、「昼寝できる場所をつくってくれ」でした。それぐらい子どもたちは疲れていたんですね。

 遊びを通じて、私たちが提供したいのは「安心して失敗できる環境」です。「失敗したらダメだよ、ケガしたらたいへんだよ」という大人の不安が子どもの可能性を奪っていきます。「失敗するな、完璧にやれ」と求められるなかで、子どもたちはどんどん縮こまってしまいます。近年、生きづらさを抱えている若者たちに出会うと「0か100かタイプ」の子が増えていることに私は気づきました。100%できないと自分が許せない。100%できないなら0と同じ。80、90の自分は許せないんですね。テストでも、90点確実に取れると思っても、たった1問解けなかったら、答案を全部消してしまうんです。苦しいだろうな、と思います。

 本当は「できる力」も大事ですが「できない」ということを受けいれられる力も大事なんですね。「なんとかなるさ」と思える力。失敗するかもしれないけれど、そのあとまたカバーできる、と思える力。そういう力は、遊びのなかで育ちます。

 遊びのなかで子どもは失敗します。木から落ちて骨折しちゃった。しょうがないじゃん。俺がやりたかったんだもん。「ケガと弁当自分持ち」。自分で責任を取るから、あんたのせいだって言わないから禁止にしないでね、という子どもの声を聴いてつくってきました。

将来ではなく今を大切に

 大人に求められているのは、子どもを信じて、腹をくくれるかどうかです。学校へ行かないと将来困るかもしれない、ちゃんと就職できないかもしれない、他人とうまく関われないかもしれない。これって大人の不安です。将来のことを考えて、子どもの今を見ていない。みなさんに言いたいです。問題は起きてから悩みませんか。子どもは今持っている力で今を生きるしかないんです。明日、手に入る力で今を生きることはできません。今がなくなったら未来なんて生きられない。今が大事なんです。今子どもが何を求めているか、好奇心が向いているのは何か、それを察知し、任せてみませんか。子どもの力を信じて、子どもが自ら伸びていこうとすることの邪魔をしない。このことを私たちがしっかりと肝に銘じることです。

 あなたのお子さんは大丈夫です。そうあなたが思ってあげてください。そして「大丈夫」という眼差しに包まれたら、子どもは自然と自分の頭で考えて動き始めます。子どもが「大丈夫」を手にいれる前に、大人たちが自分たちの不安を押しつけて子どもをつぶしていく、そんなことはもうやめて、「大丈夫」を手にいれさせてあげてください。

 苦しんでいる子どもたちが全身全霊で訴えているのはたったひとつのことです。「学校へ行けない私はだめですか? 生きている価値はないですか?」。そしてこの訴えに応える言葉はとてもシンプルなものだと思います。「生まれてくれてありがとう。あなたがいてくれて、私は幸せだよ」。このメッセージを親が伝えられたら、子どもはちゃんと自分の人生を生きていけます。(了/編集・茂手木涼岳、協力・鬼頭信)

西野さんの活動紹介

◆川崎市子ども夢パーク
所在地 川崎市高津区下作延5-30-1
利用料 無料
お休み 毎月第3火曜日・年末年始
問合せ 044-811-2001

◆フリースペースえん
川崎市子ども夢パーク内にある、学校や家庭に居場所を見いだせない子ども・若者のための居場所。
利用料 無料
お休み 土・日・祝日
問合せ  044-850-2055
※利用には登録が必要です。

2020.12.15綿毛日記

「寒いから焚き火しよう!」と山へ行くと、日差しのおかげで家にいるより暖かい。
初めて使うライターに苦戦しつつも、なんとか子どもの手で着火。
落ちていたみかんを拾ってきて、「水分多いけど燃えるんかな?」
消火用の水を触って何をしてるのかと思ったら、「竹に水を溜めて火に入れたら沸騰するかな?それとも竹は燃えちゃうかな?」
どんどん疑問が湧いてきてどんどん検証していく子どもの姿に、見ている私までわくわくさせられました。
 
お昼は広島風お好み焼き。
生地を作ろうとするスタッフに「粉の方に水を足していくとダマにならないよ」とアドバイスをくれました。
前に彼女が失敗したのを覚えていて、フォローしてくれたのかな。
さりげない優しさがすてき。

子どもの居場所事業やります!

フリースクールたんぽぽの綿毛を開催している祝谷の建物を開放して、子どもたちの居場所事業を1月と2月の第2、第4日曜日に試験的に実施します。活動内容はボードゲームなどの室内でできる遊びを主としたものです。時間は10:00~15:00の間、いつ来てもいつ帰ってもOKです。申込は下記申込フォームよりお願いします。

開催日 2021年1月10日(日)、24日(日)、2月14日(日)、2月28日(日)
時間 10:00~15:00
場所 松山市祝谷3丁目6-1
参加費 500円
活動内容 1/10と1/24は「人生ゲームジャンボドリーム」又は麻雀教室を開催予定で、2/14と2/28はカタンや人狼などのボードゲームを開催予定です。参加してくれる子どもたちに相談しながら内容は決めていくので変更もあります。TRPGやカードゲーム等も要望を聞きながらできるものがあれば取り入れていきます。
持ち物 お昼を挟む場合は昼食の用意をお願いします。活動はマスクを着用して、感染対策を十分に行い実施します。寒気もこまめに行いますので防寒着もお願いします。
注意事項 これまで面談等に来ていただき場所を把握している方は当日直接参加してください。そうでない方は一度お子様の様子も教えていただきたいので面談を行いますのでよろしくお願いします。

※この事業は愛媛県「三浦保」愛基金を活用して実施しています。

綿毛のこれから「学習支援」について・・・

キャンプやプレーパークなどの自然体験を通して子どもたちが元気になっていくプロセスを実践として体験してきた私たちのスタイルとしてのフリースクールの在り方を模索しながら、子どもたちと丁寧に関わる中で、見えてきたことが今少しずつフリ―スクールの活動にも生かされてきていると実感しています。

とにかく子どもを元気にしたい!もともとの元気魂を取り戻してほしいし、「生きててよかった!」と思える未来に向かって再び歩き出してほしいと願いながら日々のプログラムを考えています。

その中で学習支援についてはとても悩みの多い問題でした。学校へ行っていない子どもたちは勉強が遅れているということで焦りを感じ、どんどん自己肯定感を下げていきます。

中学の3年間学校へ行かなくても、「勉強を頑張りたい!」と思った時からコツコツ頑張れば必ず3年間は取り戻せるし、取り戻して大学に進学して社会でがんばっている人もたくさんいます。

そもそも大学だけが人生ではないのだから、自分の得意分野を理解し、それを伸ばすことで社会に必要な人材になっていくという方向性も考えていいと思うわけです。

ただ、たくさんの事例があっても、今学校へ行けていない子にしてみればそれはイメージできない自分の未来でもあり、親子ともに不安要因となるケースは多くあります。

今回綿毛としてネット学習でいつでもどこでも学習面を取り戻せるように作り込んだソフトを取り入れることで子どもたちに安心感を与えてはどうかという考えで「すららネット」を導入してみました。そしてスタッフもすららネットにチャレンジし、子どもたちにもチャレンジしてもらいました。

しかし、子どもの希望する学習方法は様々で、必ずしも「すららネット」がすべての子どもたちに合うということはないのと、綿毛の場合は少人数で活動しているのでドリルなどで丁寧に子どもたちの学習をみていく方が子どもにもわかりやすく、スタッフと子どもとのコミュニケーションをとるという観点からも良いのではないかということになりました。

ネット学習と言っても今はいろいろなものがあります。eboardはもともと貧困家庭などの塾へ行けない子どもたちの為の無料学習塾として利用するサイトとして作られましたが、今は学校や一般の子どもたちも利用しています。スタディーサプリ、スマイルゼミ、Z会など有料なものもいろいろなものが出ていて、それによって特色も違います。さらに「学びエイド」など有名講師のYouTube動画を無料で見れるものや、面白く歴史を学べるサイトなど、とにかく勉強の方法も様々選択できる時代となりました。

綿毛では子ども自身が自ら勉強して高校へ行きたい、大学へ行きたいと決めた時、その子に応じた学びの形をスタッフと共に一緒に考えていくことにしました。

子ども一人ひとりに寄り添い、その子に合った学びの形をこれからも一緒に考えながら進んでいきたいと思います。

2020.12.10綿毛日記

今日も人数が多かったので、昨日に続いて人狼ゲーム。
「○○さんはすごく推理して上手だった!」と昨日の様子も教えてくれて、「××は挙動不審で人狼ってすぐわかるね」「△△ちゃんは人狼になったら黙るタイプやな」と、みんなのタイプ診断も。
犯人は踊るゲームでは、なぜか毎回第一発見者のカードを引き寄せるスタッフが。
「事件に遭遇しすぎ!」「コナンくんやん」との声に、「今日の事件は…何も事件が起きなかったこと!」で大笑い。
「アニメで事件が起きんかったら、1話分丸々日常の話で持たせるの大変やろね」
 
お昼はひき肉とさつま芋のカレー。
「お肉は何にする?牛?豚?鶏?」と聞いたら「ミンチがいいです。切る手間省けるし」。
魚捌くのはあんなに好きなのに肉にはそんな感じなんだ…と、ギャップがかわいかったです。

2020.12.1綿毛日記

12月1日
畑の大根とブロッコリーを、来週収穫予定。
先々週には葉っぱしかなかったブロッコリーですが、見に行くと小さいのができていました!
大根を試しに少し抜いてみたら、真っ白でつやつや。
「葉っぱがチクチクする!」「茎を折ったら水が出てきた!」
お店で買った大根ではできない体験です。

料理中、「うわー!」と声がしたので見に行くと、味噌汁のお鍋が紫に!
原因は紫芋。
「色やばい」「魔女が作りよるやつやん」「毒入りスープやん」「味噌入れたらどんな色になるんやろ…」
入れると「芋が勝った…味噌は濁っただけ…」
見た目はものすごく怪しいけど、味は普通のお味噌汁。
「紫芋でシチュー作ったらおもしろそう」「映えるな~」
次回作も期待です。

2020.11.26綿毛日記

11月26日
「今日は午前も午後もSSTやな!」
午後はソーシャル・スキル・トレーニング、午前はさかな・さばき・トレーニングです。
 
魚は前回と同じ、身の硬いコロダイ。
間違えたり失敗したりと苦戦していましたが、できあがったお刺身はとってもきれい!
お花のような繊細な盛り付けは大人が手伝ったわけではなく、子どもが考えて並べた物です。
「センスがすごい!」とみんなから大好評。「将来は料理人が向いとると思うな~」との声も。
いいところをどんどん磨いていけたらいいな。

2020.11.24綿毛日記

11月24日
今日はスタッフのアイデアで、マスキングテープを使ってクリスマス飾り!
壁に貼ろうと思っていたのですが、「壁紙剥がれませんかね?」「えー大丈夫やろー」と試してみたら、ちょっと危なそうだったので窓ガラスに貼りました。
子どもの方がしっかりしてます。
 
お昼はハンバーグ。
「ゼラチン入れてみる」「え?冷やして固める物やけん入れても意味なくない?」「ハンバーグがジューシーになるってゼラチンの箱に書いてた」
子どもの方がしっかりしてます(2回目)。よく見てるなぁ。
具の野菜が多かったせいか何個か崩れちゃったけど、そぼろ丼にリメイクしておいしくいただきました。

2020.11.19綿毛日記

今日は魚の捌き方教室。いつものマダイとは違う、身の硬いコロダイとコショウダイに大苦戦でした。

講師の魚屋さんは、「先にあれこれ言うより、好きにやらせて失敗して覚えたらええわい。理屈は後で説明すればいいんやけん」と、捌き方も刺身の切り方も子どもに一任。
刺身を厚切りにして食べていると、「身が硬い魚は薄切りの方がええんよ」と薄切りにしてくれて、食べ比べたり。
「湯引きがしたい」「この魚は湯引きは向かんけど、やりたいならやっておみ」と作ったら、言われた通り皮が硬かったり。

いろんな失敗をしっかり肌で感じた1日。レベルアップのための大切な経験値です。

2020.11.4綿毛日記

11月4日今日は朝から山で穴掘りをしました。

生ごみを埋めるとごみも処理できるし土の栄養にもなるし一石二鳥。 掘ってみたけどちょっと大きさが小さかったので、大きくする方法を一生懸命考えました。

穴をもう一つ掘って、最後につなげる作戦です。最終的に、大きいひとつの穴ができました。「ここに魚の骨を埋めたら、何万年後に発掘されて『ここは海だったのかも』って思われそう!」と、想像が膨らみます。

お昼はたこ焼き。小麦粉の分量がいつもとちがって、なかなか固まらず… 2回目は増やしてみると、あっという間に固まって、小麦粉の分量で固まる速さが全然違いました。

今日は畑でとれたさつまいもを混ぜ込んだクッキーづくりもしました。さつまいもをなめらかにするために、いろんな道具をつかって試行錯誤。穴掘りも、さつまいもの裏ごしもアイデアで効率よく。明日は楽しみにしていた釣りの日です。お天気もいいみたい。たくさん釣れるといいね

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