平成29年4月4日に文部科学省が通知を出した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針の策定について(教育機会確保法)」をご存知でしょうか?
不登校の子ども達を応援する新しい法律が2017年2月14日に制定されてから、4年が経ちました。不登校の子ども達は、全国で令和元年度18万人以上となり、7年連続で増え続けています。
愛媛県でもコロナ禍の中、不登校になる子どもたちが増えています。愛媛県教育委員会によると令和元年1月時点の愛媛県の不登校生徒数は1352人に対し、令和2年1月時点の不登校生徒数は1617人となり、265人増えています。(不登校生の人数は月3分の1以上欠席したものの内、学校が不登校と判断したものの数です。)
この法律についてどれぐらいの人が知っているのか?学校の先生は理解しているのか?
今回はこの法律のことを少し説明させてください。
基本指針に書かれていること・・・
この基本理念を踏まえ,不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等,夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等,教育機会の確保等に関する施策を行うことが必要である。
まず,全ての児童生徒にとって,魅力あるより良い学校づくりを目指すとともに,いじめ,暴力行為,体罰等を許さないなど安心して教育を受けられる学校づくりを推進することが重要である。
不登校は,取り巻く環境によっては,どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え,不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し,児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要である。
不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われることが求められるが,支援に際しては,登校という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要がある。なお,これらの支援は,不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ行うこととし,当該児童生徒や保護者を追い詰めることのないよう配慮しなければならない。
この法律ができる前は、支援は基本は「学校復帰」が前提でした。でもこの法律ではその文言はすべて消されています。
それから「不登校というだけで問題行動としない。」「登校という結果のみを目標にしない。」そして「社会的に自立することを目指す必要がある。」と明記されました。
学校へ行かないことで苦しんできた子どもたちがこれまでも多くいました。良い学校、良い大学へ行くことが幸せな未来に繋がると信じて学校で真面目に勉強したにもかかわらず、大人になってから病んでいる人も増えています。
どんな時代が来ても強く生き抜く力を養い、広い視野で物事を考えることのできる人間力を育てていくこと。それは学校という枠を超えたところで子どもを育む必要がこれからはあるのだと思います。
第12条 学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握
国及び地方公共団体は,不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況,不登校児童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものとする。
つまり学校や教育委員会は不登校児童生徒がフリースクールなどの学校以外の場において行う活動について把握をしていく必要があるので、連携は必須であるとも捉えられますが、愛媛の場合はまだまだフリースクールの方から話を持っていかないと連携してもらえないのが現状です。
現在、愛媛県のフリースクール等が連携を組み、「愛媛県フリースクール等連絡協議会」を立ち上げ、フォーラムの開催や、松山市の小学校と中学校に不登校支援についての冊子を配布させていただいています。
今後も学校や教育委員会とも連携しながら苦しむ子どもを一人でも減らすために継続的に活動を進めていきたいと思います。
第13条 学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援
国及び地方公共団体は,不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み,個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ,当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう,当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供,助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。
この文章の大事なところは「個々の不登校児童生徒の休養の必要性」です。
学校へ頑張って頑張って行っていて、糸が切れたように行けなくなる子はとにかく休養が必要です。まわりの大人は気づけなかったかもしれないですが、とにかく疲れています。勉強なんか考えられないし、未来に一筋も希望が見いだせなくなっています。言葉では親に心配かけまいと平気なふりをする子もいます。休養の時間は子どもによって様々です。半年の子もいれば3年かかる子もいます。でもしっかり休養ができれば必ずもう一度前に進もうとします。
それを信じて待つことは簡単そうで大変なことです。どうしても子どもの将来の為と思い、塾に行かせたり、進学校に無理やり行かせたりしてしまう保護者が多いと感じてきました。
本人が決めて行くのであれば問題はありません。しかし子どもの将来に不安な保護者ほど本人に決めさせていると言いつつ、本人にその意思がないまま、習い事などに通いどんどん元気をなくしていくケースを見てきました。
法律で「休養の必要性」を明記したことは画期的なことです。これは全国のフリースクールなどを運営する人たちの切なる願いが言葉となりました。今まで苦しんできたたくさんの子どもたちを見てきた支援者たちが、これ以上同じ苦しみを味わう子どもを増やしたくないという想いが込められているのだと思います。